月が導く異世界道中 | ||||
1巻 | 2巻 |
女神の加護を碌に貰えないまま異世界に飛ばされた深澄真はエマや深澄巴と出会い、亜空に村を作ることにした。
ようやく拠点が出来て安心していると、外部から勝手に入れないはずの亜空に黒蜘蛛が入り込んできた。
傷を負いながらも撃退し、気を失った深澄真が目覚めた時に見た者は?
2巻ネタバレ
勝手に主人にされていた
黒蜘蛛と死闘を繰り広げた深澄真が目を覚ますと、見慣れぬ美女が看病していた。
頬を染める娘を訝しがりながら、深澄真は心を整えて何があったのかを思い出す。後から分かったことだが、深澄真には回復の魔力適正がなかった。
そのため、魔法で傷を治すことが難しく、黒蜘蛛との戦闘で死にかけていたらしい。
深澄巴やエマが必死の術を施したことで一命を取り留めていたのだ。さて、目の前の娘は何と黒蜘蛛が女性に変化した存在だった。
深澄澪と名乗る黒蜘蛛は深澄真をご主人様と呼び慕ってくる。意識不明の状態で勝手に契約されるなんてことがあって良いものか、と捲し立てる深澄真だが、ウットリと二人の邂逅を語り始めた深澄澪の耳には届いていなかった。
この世界は強制イベントが多すぎる……
皮肉も通じない深澄澪のことはもう諦めるしかない。
そういえば黒蜘蛛に襲われていたドワーフがいたはずだ。ドワーフは住処を失っており、深澄真の庇護下に入りたいらしい。
まあ、ドワーフに悪感情はないし、とても役に立ちそうなので深澄真は快く受け入れた。
オーク、龍、黒蜘蛛ときて、次はドワーフだ。
周囲の歓声の中、深澄真の呼び方は何にすべきか、という議論が湧き起こった。多くの民衆を導く立場なら、それなりの呼び方が必要だろう。殿様、若様、ご隠居様……え、その三択で決まりなの?
完全に深澄巴の好みではないか。
結局、深澄真に選択権はなく、皆の好みで若様に決定した。
クソ女神のせいでヒューマンの敵に
翌日、深澄真は深澄巴に呼ばれて広場に出向いた。また知らない人たちが増えてる……ドワーフ……は許可したから知っている。
ミスティオリザードというのは深澄巴が連れてきた眷属らしい。集団戦闘が得意で頼もしい彼らが108人とは凄い戦力補強になった。
さらにアルケーというのが深澄澪の眷属らしい。
プチ澪のように若干M属性があるような気がするが、積極的に見なかったことにしよう、そうしよう。
もう嫌だ、ボクはヒューマンに会いたくなったヨ。人外だらけの亜空で過ごすことにストレスを感じた深澄真はそそくさと町に向かった。
町に近づいた深澄真は人が居たので話しかけてみるが言葉が通じない。その上、悲鳴を上げて逃げられた。
なぜだ!?
それにしてもこの世界の人間は本当に美形だ。そのようなことを想っていると兵隊か冒険者といった集団が武器を携えて向かってきた。
どういうことだろう。
友好的に話しかけるがやはり言葉が通じない。それどころか魔法で攻撃を仕掛けてきた。
何でだよ。
あ、そういえばクソ女神がヒューマン以外と話せるようにしてやる、と言っていた。間違っても醜い種をヒューマンにばらまくな、とも言っていた。
こういうことか、と深澄真は攻撃を受けながら逃げ帰るしかなかった。
目立ちたくないのに
自分の醜い顔のせいで迫害されているのかと落ち込む深澄真に深澄巴は気付いていなかったのかと笑う。いや醜いということではない。
深澄真は魔物も逃げ出すレベルの魔力を垂れ流しているのだ。つまりヒューマンから見ると魔王がいきなり現れたみたいに映ったのである。
それは攻撃されるわ。
それなら言葉を学び、魔力を押さえる術を学べば良い……深澄真はそう思っていた。
だが、予想以上に困難だった。
読み書きや聞き取りは何とかできるようになったが、発音が難しすぎる。偶然、空中に文字を書く方法を編み出し、少し活路が見えた。
魔力もドワーフたちの尽力のおかげで魔力を押さえる指輪を作ってもらった。
さあ、リベンジだ。
深澄真はもう一度ヒューマンの街へ向かうことにした。
今度は無事街に入れたが見渡す限り美形、美形、美形……
深澄巴や深澄澪は美形なんていない、と平然と述べるが、お前たちも美形だよ、こんちくしょう。さて、今後の事を考えて商業ギルドに登録しようとする深澄真だが、目を離した隙に深澄巴や深澄澪が勝手に登録しようとしている。
人間だと200~300くらいのパーティーが有望株という世界で、1320の深澄巴と1500の深澄澪だった。目立ちたくないのに悪目立ちする。二人の主人としてどれだけ優秀なんだ、という声が飛ぶ中、深澄真のレベルは1だった。
だって、この世界に来て1か月だもん……知ってたよ。
目立ちたくないって言ったよね(血涙
その夜、レベル444のランクSS、絶野最強の冒険者ミルス=エースに襲われた。どうやらレベルを改ざんする方法が存在するらしく、派手にやらかした深澄巴たちを叱咤しに来たのだ。
このままやり過ぎてバレてしまうのはお互いに都合が悪い。もし、深澄巴たちが自分の仲間になるのなら見逃してやろう、という提案だった。
金も名誉も手に入るというミルスは、レベル1の深澄真に使われるよりマシだろう、と言い放つ。
その言葉は深澄巴たちには逆鱗だった。
主を馬鹿にされた深澄巴と深澄澪を止められるものがその場にいるはずはない。
いや、そこでミルスが倒されれば被害は軽微で済んだはずだった。だが、ミルスはクレイイージスを利用して深澄巴の攻撃を防いだのだ。
レベルを詐称しているとはいえ、それなりに強く金もあるため良い装備もあるのだろう。
だが、それは無駄な抵抗だった。
深澄巴の拳と深澄巴の平手打ちだけでもはや戦いにもなっていない。
まあ、手加減は深澄巴の方が上手い。いや深澄巴の方が上手い。……二人は自分の方が深澄真の意図に添えていると喧嘩し始めた。
自分の方が多く倒した、と言いながら街を破壊していく二人。結果的に街は廃墟になった。
その結果を知った深澄真が雷を落とすのであった。
感想
一般的には仲間が増えて万歳といったところなのですが、我儘女神のおかげで深澄真にはヒューマンと言葉が通じないという致命的な特性があります。
つまり、この世界でヒューマンとラブロマンスが起きることはないのでしょう。
一転、龍とか蜘蛛とかオークとか人外には好かれる深澄真ですが、オススメしたいのはエマさんです。
通常、美少女になりそうなエマさんですが、ガチオークのままです。
でも、性格は一番まともです。彼女がきっと正ヒロイン……になれるの日は来るのでしょうか。