作品概要
漫画「深夜食堂」は安部夜朗による料理・グルメジャンル漫画。2006年よりビッグコミック増刊にて連載開始。 2007年からはビッグコミックオリジナルに移籍。全22巻。 2009年からTBS・MBS系列で小林薫主演でドラマ化、第4部からNetflixで配信、現在第5部まで配信中
2015、16年には小林薫主演で映画化されている。全2作
登場人物紹介
マスター
新宿・花園界隈の路地裏で飯屋を営んでおり、営業時間は深夜0時から朝の7時前後まで一人で切り盛りしている。 メニューは豚汁定食とアルコールのみだが、基本的には客の要望に答えて何でも作るスタンス。 場所と時間のため脛にキズを持つものも多いが、常連客からは「めしや」ではなく「深夜食堂」として愛されている。 20年前に先代から「めしや」を譲り受け、基本的に年中無休営業。 名前も出身も経歴も全く明かされていない店主「マスター」である。
剣崎竜
第一話から登場する広域指定暴力団今城会系鬼島組のヤクザ。 オープンして間もない頃店を訪れ、子分のゲンがマスターといざこざを起こす最中に、赤いウインナーを注文する。 タコさんウインナーに大満足し、それ以来常連に。 ウインナー炒めの大盛りを肴に酒を飲む。 ある時小寿々と知り合い、甘い卵焼きと交換し合う仲になる。 発砲事件で撃たれ入院した時には小寿々がマスターに頼んだ弁当をうまそうに病院で頬張った。 最初の出会いは最悪だったが、店のトラブルを解決してくれることもしばしば。
風見 倫子
元アイドル歌手の女優。 「めしや」によく訪れるが周りは彼女とだと知っていても知らぬふりをしている。 小さい頃に父親が蒸発したが彼の作る「目玉焼きのせソース焼そば」が大好物。 マスターが落とした財布を倫子の父親が拾って届け縁ができた。 テレビに映る彼女を見て、お礼は倫子が訪れたら「四万十川の青のり」をかけた目玉焼きのせソース焼そばを食べさせてやってくれとマスターに伝える。 倫子に四万十川の青のりのかかった目玉焼き乗せソース焼そばを出したことで彼女は父親が店を訪れたことを察した。 度々店を訪れるが再会には至らず、年始には酔っぱらい暴走し、アイドル時代の歌を熱唱した。
まゆみちゃん
古参の常連の一人、大食漢で太っている。 静岡県の沼津市出身で妹もいるが、やはり同じように太っている。ダイエットにしばしば挑戦するが、リバウンドを繰り返し、よりボリュームが増してしまうのはお約束。 人が食べているものが欲しくなると止まらない。 ジムにも通い身体を鍛えているが、常連の八郎の親友でジムのインストラクターの成瀬などには興味がなく、もっぱら食い気である。 本業はイラストレーター、「人気イラストコラムニスト関野まゆみの世界」がテレビで放送されるなど結構人気。
小寿々
本名「小村徹五郎」ゲイ歴48年でまだまだ現役のゲイ。 新宿2丁目でゲイバーを経営している。 竜から赤いウインナー炒めをもらったことで、仲良くなり好物の甘い卵焼きと交換するのが日常になっている。また環境から竜に共感を懐いている。 甘い卵焼きは初めて勤めた銀座の「お夏」のボーイであった“コウちゃん”に作ってもらった思い出の味でもあり、それ以来の好物でもある。 「お夏」の同僚やコウちゃんが亡くなったことにショックを受けた。
あらすじ
新宿2丁目の花園界隈の路地裏で深夜12時から朝の7時頃まで営業している飯屋がある。 看板はなく暖簾に「めしや」という文字が書かれているだけの質素な飯屋。 常連はいつしからかこの店を「深夜食堂」と呼ぶようになっていた。
メニューは豚汁定食600円とビール(大)、酒(一合)、焼酎(一杯)しかない店ではあるが客も結構おり繁盛している。 その理由はマスターの営業方針、客が食べたいものを勝手に注文してくれれば、できるものなら作るというスタンスが好評であるからだ。
新宿という土地柄と深夜という時間帯のため、店に来店する客層はバラエティーに飛んでいる。 風俗や水商売関係者から俳優、女優、大学教授に落語家、警察官から暴力団組員までと様々。 常連も多く、話を聞くタイプのマスターであるため様々な話題が店内で飛び交う。 そのために思いもよらない人と人の出会いや別れなどエキセントリックな人間模様が繰り広げられることも多々ある。
基本的には来店する客の注文やマスターの賄いなどのメニューが話の導入部となり、そこからドラマが繰り広げられていく。 マスターがストーリーテラーとなり客の注文する「赤いウインナー炒め」や「甘い卵焼き」、「目玉焼きソース焼きそば」などの料理に秘められた客の回想劇が語られていく。
見どころ
深夜食堂のみどころはやはり料理描写の上手いところと言っていいでしょう。 けっして写実的な絵ではないですが、読んでいると食べたくなる、食欲を促す絵と登場人物の食べっぷりがいいのが魅力です。
そして新宿の二丁目花園界隈という土地柄のために年齢、職業がさまざまな常連や初登場の客のドラマが繰り広げられ飽きがこず、タイトルのメニューからどんな話へ繋がるのか予想がつきにくいのも毎週楽しんで読めるポイントになっているはずです。
一人で訪れる客の多くは大都会東京で孤独を背負っていきており、感動できる話から、思わず「くだらねー(笑)」と言ってしまうようなものまで、その回想劇は様々。 常連客はしばしば登場して過去が掘り下げられている人や常連客同士の横の繋がりから話が掘り下げられもしています。
感想
深夜食堂はグルメ漫画の中でもより人間ドラマに重点を置いているのが魅力。 絵のタッチは好き嫌いが別れる方も多々いると思いますが、中毒性のある漫画な印象です。
ドラマの小林薫氏のマスターの配役は格好良すぎるきらいもありますが、漫画と実写版がしっくりくるのは「孤独のグルメ」「食の軍師」と並びたつものがあります。
個人的には「猫まんま」や「四万十川の目玉焼き乗せソース焼そば」の回に代表されるような“ちょっとホロッ”とくるような話がオススメです。 猫まんまの回の“人生行き当たりばったり”この歌のフレーズも最高ですね。
倫子のアイドル時代の「じゃまじゃまボーイをぶっ飛ばせ」や「ドッキンリンゴ姫ドキドキ!」このあたりのフレーズのセンスも絶妙。 おちゃらけたところを見せつつ落とす、綺麗に纏めるところが素晴らしく必見です。
漫画から入ってもドラマから入っても楽しめる完成度の高い作品です。