「響 〜小説家になる方法〜」響という未知との遭遇と、小説家の世界をじっくり堪能できる漫画!

概要 ~響 〜小説家になる方法〜~

漫画「響 〜小説家になる方法〜」は柳本光晴による青年漫画。2014年より「ビッグコミックスペリオール」にて連載開始。全(既刊)13巻。2018年9月14日『響 -HIBIKI-』のタイトルで映画公開、主演は欅坂46の平手友梨奈。

登場人物紹介 ~響 〜小説家になる方法〜~

鮎喰 響(あくい ひびき)

読書好きの15才の少女、天真爛漫というよりもその破天荒っぷりは怒髪天。ほぼ1日1冊のペースで小説を読み漁る。

独特の感性と表現力や発想力は持っているのだが、歯に衣を着せぬ発言、相手が誰であってもストレートに感情を表現するため、要らぬトラブルを招くことも多々ある。

小説『お伽の庭』を執筆し「木蓮」新人賞に応募し、“花井ふみ”が偶然それを目にしたことから物語はスタートする。史上初の芥川賞・直木賞の同時受賞するものの、彼女の破天荒な行動が波紋を生むことになる。

花井 ふみ(はない ふみ)

本作の狂言回し的な役割を果たす女性編集者。

新人賞に応募されてきた『お伽の庭』だったが、手書き作品は規定外のため読まれることなく選考外になりゴミ箱行きに。そのゴミ箱に捨てられた『お伽の庭』のスケールの大きさに心を奪われる。いわば響の第一のファンでもある。

出版不況でラノベ、 インターネット小説全盛のこの時代になんとか文芸作品を復権させたいという思いで、響と『お伽の庭』に自分の夢を託して奔走する。

祖父江 凛夏(そぶえ りか)

響の通う高校の文芸部の部長。本名は祖父江・sofia・凜夏。父親は日本を代表する純文学作家である祖父江秋人。

父親の影響で早くから小説家になることを志し、在学中に『四季降る塔』でデビューする。 響の才能を認める一方で自分との才能差に人知れず苦しむ。

響とは正反対に自分を殺し、誰とでも仲良く振る舞い本当の自分を出せず苦しむが、響と知り合い、彼女だけには素の自分を見せるようになった。

椿 涼太郎(つばき りょうたろう)

響の同級生で幼なじみ、文芸部の門を叩いたのも彼の提案。響の世話係でもあり、破天荒な彼女に振り回されながらも健気に尽くす。

ハンサムで運動神経もよく頭脳明晰なため、実はモテモテなのだが、彼の目には幼なじみの響しか映らない。常に彼女の味方である一方で、小説家にはならず普通の女の子でいてほしいとも思っている。

山本 春平(やまもと しゅんぺい)

デビュー作が芥川賞にノミネートされ順風満帆、期待に満ち溢れた作家生活をおくるかのように思われていたが、その後最終選考にまでは残るものの、力及ばず受賞を逃すことで自信を失っている。『豚小屋の豚』をラストチャンスとして決めていたが『お伽の庭』に敗れて失望のあまり踏切で自殺を図ろうとする。しかし会場から逃げだしてきた響と偶然出会い、彼女の言葉が琴線に触れ思いとどまった。翌年『百年前の一目惚れ』でめでたく芥川賞を受賞する。

あらすじ ~響 〜小説家になる方法〜~

出版不況の煽りをうけ文芸雑誌『木蓮』もその例外を免れることは出来ずに編集部員は嘆くばかり。そこに届いた一通の作品が波紋を呼ぶ。

題名は『お伽の庭』、しかし手書き作品は規定外で選定外となる。

しかし偶然その作品を手にとった『花井ふみ』は圧倒的な筆才に惹かれていく。この作品を世に出したいと思う彼女は鮎喰響という本名かペンネームかも解らぬ名前に一縷の望みを託して奔走する。

当人の鮎喰 響は高校へ進学、幼なじみの涼太郎を誘い文芸部に入部する算段を建てる。そこで狂気な一面を見せトラブルを起こすが、部長の『祖父江 凛夏』と知り合い、部を存続させるために奔走することになったが、どうにか部員を集め文芸部を存続させる。

木蓮の編集部では結局お伽の庭を新人賞として選定し、話題を呼ぶ。そんな折、祖父江秋人の娘である凛夏にデビューの話を持ちかけるために、花井は祖父江宅を訪問。そこで偶然響と念願の邂逅を果たす。

新人賞の授賞式で響は田中康平とトラブルを起こす。康平は響の作品を読んでおらず、彼女と自分の扱いの差に怒りを覚え、彼女に絡むと響はパイプ椅子で殴打。前代未聞の出来事として格好のマスコミの餌食に。さらに凛夏に絡んでいた芥川賞受賞者の鬼島仁を蹴り倒し問題は拡大していく。

時は流れ、芥川賞・直木賞の候補がノミネートされる季節。『お伽の庭』は芥川・直木賞にダブルノミネートされる。世間の響への目は厳しいものがあったが、それを救ったのはトラブルの元となった鬼島、田中の両人が響の才能と『お伽の庭』を絶賛したからだ。その結果『お伽の庭』は芥川・直木賞をダブル受賞するのだが…さらにトラブルが続いていくのだった。

見どころ ~響 〜小説家になる方法〜~

「響 〜小説家になる方法〜」の見所はやはり主人公の響の予測不能なキャラクターでしょう。正直一度読んだだけでアレルギー反応を起こす方も少なくないはずです。じっくり読んでいくとキャラクターが小説、文芸にかける思いをこちらにしっかりと深く訴えかけてきます。

その一因は各キャラクターの掘り下げがしっかりされているからだと言っていいでしょう。特に凛夏や鬼島仁、それから苦難の時代を乗り越えた山本春平など登場人物の多くがコンプレックスと戦い、それを克服していきます。響以外のキャラクターにもきっちりページを使って描写が深くされています。

響というある意味“異物” “未知の存在”と接触することで、そのキャラクターが“響く”影響を受ける描写は見所だと言っていいでしょう。

感想 ~響 〜小説家になる方法〜~

ある意味福本先生の描く「アカギ」や「カイジ」に出てきそうなくらいの破天荒さを主人公の鮎喰 響が持っているのが凄いです。破天荒を通り越して「狂気の沙汰」と言っていいくらいのアイデンティティを響は持ちます。実際に有名な文壇家は古今東西、今昔を問わず結構自殺される方が多いのは、やはり独特な感性が無理なんだろうなと思わされるくらいの描写がされている印象ですね。

様々な思惑があるにせよ花井さん以外はやはり登場人物に一癖も二癖もある人が揃っていますのでこのあたりは好き嫌い別れるところではないでしょうか?

ただこの作品の凄いところはやはり“熱量”をそれぞれのキャラクターが持っていることと言っていいでしょう。それも滾らんばかりのものをそれぞれがもっています。響は小説、花井は文芸復活、涼太郎は響への思い、凛夏は父親や響との才能差やコンプレックスです。それぞれが抗うための熱を感じさせるため、キャラクターが躍動、生命感を感じさせているのでしょう。

映画化もされ2018年の夏には特に話題を呼びました。物語に熱を感じる作品を読みたい方に響 〜小説家になる方法〜はオススメできる作品です。