「この世界の片隅に」戦争に翻弄されながらも懸命に暮らしを営む女性の物語

この世界の片隅に ~概要~

漫画「この世界の片隅に」はこうの史代によるヒューマン漫画。2007年より漫画アクションにて連載。全3巻(上・中・下)。2011年に日本テレビ系でドラマ化、2016年にアニメーションによる映画化、2018年にTBS系でドラマ化された。

この世界の片隅に ~登場人物紹介~

北条(浦野) すず(ほうじょう(うらの) すず)

本作の主人公。広島江波出身。おっとりした性格だが、意外に敏感でカンが働く。18歳の時に舞い込んできた縁談により、呉の周作と結婚する。実は周作とは子供時代におきた「ばけもん」事件の時に会っている。戦争により、右腕を無くしてしまう。

北条 周作(ほうじょう しゅうさく)

呉出身。子供時代に一度会っただけのすずに結婚を申し込む強者。性格は真面目で暗いと捉えられることもあり、意外にも気にしている。すずのことを心から愛している。戦争に行くが、前線に出ることなく無事に帰ってくる。

水原 哲(みずはら てつ)

すずの幼なじみ。ガキ大将。兄を事故で亡くして以来、親も荒れていて辛い幼少期を過ごしていた。すずに密かに想いを寄せていた。海軍に入る前に北条家を訪ねたが、すずの周作への想いを知ることになる。戦争を生き抜き、終戦後、すずを見かけるが声をかけることはなかった。

白木 リン(しろき りん)

二葉館の遊女。カラッとした性格。すずとは闇市で出会い友人になる。ただし、ひょんなことから周作の元彼女であることがわかり、すずにとっては複雑な存在となる。空襲により二葉館も焼け落ち行方がわからなくなってしまう。

浦野 すみ(うらの すみ)

すずの年子の妹。美人でしっかり者。秀作からの縁談が舞い込んだ時、すずはすみちゃんの間違いでは?と思ったほど。原爆投下時は無事だったが、母を探していた為、二次被曝してしまう。原爆投下後、すずと再会を果たす。

この世界の片隅に ~あらすじ~

広島江波でのんびり暮らしていたすずのもとに縁談が舞い込んできます。相手は呉の北条周作でした。 すずは断る理由もないと受諾し、彼に嫁ぐことになります。

実は周作とは子供時代に会っていました。お使いに行く途中に「ばけもん」にさらわれてしまった時、籠の中にいた少年こそ周作だったのです。不思議な縁を繋ぎ、2人は夫婦となりました。

北条家では周作の姉・黒村径子にネチネチ言われる日々が待っていました…。ただし、径子の娘である晴美には慕われ、それなりに楽しく過ごしていきます。

ある日、すずは闇市で迷子になってい時、リンと出会い友人になります。話しているうちに、リンが周作の元彼女であることがわかり、秀作に対し疑心を抱くようになってしまいます。

度重なるように幼なじみでどこか想いを寄せていた哲が呉を訪ねてきます。すずは哲と話をする中で、周作への本当の気持ちに気づくことになります。哲もそれを悟り、去っていきます。

戦禍は激しくなり空襲も多くなりました。そして…落とされた時限爆弾により晴美を亡くし、自身も右腕を無くしてしまいます。 径子に責められ、リンとのこともあり周作とも上手くいかなくなっていたすずは、広島に帰る、と言い出します。

運命の8月6日、病院の都合で帰省が遅れ、その時に径子と和解できたすずは北条家に残ることにしました。そして、広島への原爆投下、戦争の終わりがやってきます。

すずは結果として原爆を逃れました。でも激しい怒りが込み上げてきたのでした。

一億玉砕の覚悟とはなんだったのか

…それでも世界は回っていきます。生きていかなくてはいけません。

すずは最後に「この世界の片隅にうちを見つけてくれてありがとう」と周作に伝えるのでした。

見どころ

戦争時代を描いた作品のため、重い部分も多いですが、人を愛すること、生きている喜びを描いたシーンにも注目して欲しいです。周作の静かで深い愛、哲の秘めた想いも見逃せません。

晴美が亡くなるシーンは悲しいです。母である径子がすずに何故守れなかったのかと責めるのですが、腕まで無くしたすずには酷に写ります。でも母であるからこそやり場のない悲しみがあったのではないかとも思います。

どんな状況になってもめげないすずの、最後の名セリフは特に感動的です。

感想

優しいタッチの画風がかわいいです。すずはのんびりしているように見えて普通の大人の女性(当たり前ですが)らしく、嫉妬したり、迷ったり、実家に帰ると言ったり…今も昔も夫婦の間にある問題って変わらないな〜と思いました笑。

そして、その度に周作が遠くからブレることなくすずを想ってくれています。最初は迷いもあったすずも周作の優しさに応えるように、周作の隣に自分の居場所を見つけていきます。

そして、最後のすずの言葉に繋がっていくのだと思いました。悲しみはあるけれど、温かさもたくさん感じられる作品だと思います。