夜中の2時に運転すると・・・
ある日の夜、俺は気晴らしにドライブに出かけた。
1時間ほどドライブし、パーキングエリアで休憩していた。
缶コーヒーを飲みながら、ふとあることを思い出した。
夜中の二時頃この道を通るとものすごい速さで追いかけてくる老婆が出現するというものだ。
ふと時計をみるとまさに二時頃をさしていた。
まさかそんなことあり得ないだろうと思いながらも、少し気持ちが悪くなったので、車に乗り込み帰宅しようと車を発進させた。
しばらく運転していると、バックミラーに何かが映った。
老婆だ…
俺の車の後ろににピタッとついてきている…
時速50キロは出ているのだが、全く離れない。
恐ろしくなり、速度を上げた。
しかし離れない。
俺は本気になった。
アクセルをベタ踏みし、次のコーナーで突き放してやる。
俺は毎日豆腐の配達でこの道を運転しており、道の特性は熟知している。
しかも得意な下りだ。負けるはずがない。
コーナーに差し掛かり、一気にブレーキングからのドリフトを決め、コーナーを抜けきった。
完璧だ。どうだ!?
バックミラーを確認する。
距離が離れていない…それどころか少し詰められている。
くそ…なんて速さだ。
汗が首筋を伝う。
仕方がない。次のヘアピンであれを使うか。
ヘアピンに差し掛かると、俺は左前輪を側溝に引っ掛けることによりタイヤのグリップ以上のカーブを曲がって見せた。
どうだ!?バックミラーを確認する。
少し距離が離れた!
ババアも焦りの表情を見せている!
よしいける!
しかしその瞬間、老婆は不敵な笑みを見せた。
次のヘアピンに差し掛かり、前回同様に側溝に右前輪を引っ掛けカーブを曲がる。
サイドミラーを見て、老婆を確認する。
真後ろにいる!なぜだ!?
よく見ると老婆は同様に右足を側溝の縁にのせ、左腕をぐるぐる回し、体を右に傾斜しながらすごい速度で走っている。
まさかそんなテクニックが…
と思った瞬間タイヤがダレていたせいかコースが膨らんでしまった!
その瞬間、老婆がインに入り込んでくる。
ババアァァーー!!
アクセルをさらに踏み込む。しかしタイヤのグリップを超えさらにコースは膨らみ車はむなしく反転して止まった。
老婆は風のように走り去っていった。
老婆の後ろ姿を見ながら呆然とする俺。
この秋名山で俺が負けただと?
なんて走りだ…
虫の鳴き声がやけに大きく聞こえた。