怖い話、[部屋]
その日は、梅雨の蒸し暑さが続く7月の金曜日でした。
いつもより早く仕事が終わったA美は、友達のB子と家で飲む約束をしました。
夜の8時ごろ、B子と駅前で待ち合わせし、コンビニで買い物を済ませると、A美の家へと2人で向かいました。
A美の家に到着し、2人は早速お酒を飲み始めました。
仕事の愚痴や恋愛話をしながら、何本かビールが空になったところで、ふと、B子がA美に言いました。
B子 「A美、私ちょっと大事な用事を思い出しちゃった。ちょっとこれから付き合ってくれない?」
A美 「大事な用事?どうしたの急に?」
B子 「ちょっと、急に思い出しちゃったの」
A美 「思い出したって、何を?」
B子 「いいから、大事な用事なの!」
B子が少し声を荒げたので、A美は驚きました。
そして、B子の表情が強張っていることに気づきました。
A美 「わ、わかったよ、付き合うから。そんなに大事な用事なのね」
訳もわからずA美は出かける準備をしました。
夜も遅くなってきたので、外は肌寒いと思い、上着を取りに寝室のクローゼットへ向かおうとしました。
すると、B子が急に
B子 「ちょっと、そんな時間ないの!」
B子は目を大きく見開き、怒りに満ちたような表情で言いました。
A美はB子の豹変ぶりに少し怖くなりました。
A美 「どうしたの、ちょっと酔いすぎじゃない…」
言い終わらないうちに、B子はA美の腕を引っ張り、玄関へ連れ出そうとします。
A美 「(痛いっ)」
かまわずB子は強く腕を引っ張り、家を出た後もA美の腕を掴んだまま放しません。
どんどんと暗い街灯の道へと進んでいく二人。
A美はB子の豹変ぶりにどんどん怖くなっていきました。
B子が急に足を止めました。
そして静かに口を開きました。
B子 「私、見えたの」
A美 「見えた?」
B子 「A美の部屋にいたの」
A美 「?」
B子 「A美の寝室のベットの下に、包丁をもった男がいたの」
B子は、ベットの下に潜り込んでいた空き巣の存在に気づいで、急いで逃げようとしていたのでした。
B子が気づいていなかったら、また、A美一人で家に帰っていたらと思うと、A美は背筋がぞっとしました。