王様ランキング | ||||
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『王様ランキング』は十日草輔(とおかそうすけ)先生が描くweb漫画作品で、雑誌への連載漫画と異なり、一定の制約が取れた中で自由に描かれた漫画です。その為、従来の話題作とは、色々と異なるところがあり、とても新鮮で面白いです。なんといっても。その魅力はなんといってもそのあたたかい登場人物たちで、子供に与える漫画としても申し分ないと言えるでしょう。
この漫画の舞台は、剣や魔法、魔物や呪いの存在する中世ヨーロッパを想像したらよいかと思います。この世界には、各国王に順位を付けた「王様ランキング」なるものが存在していました。そのランキングを上げるために、愛すべき主人公であるボッジが仲間たちと努力して成長し、立派な王になっていく物語です。
1巻ネタバレ
【みんなにバカにされるダメ王子】
主人公はボッス王国の第一王子である少年「ボッジ」ボッジは王様ランキング7位の体が大きく強い父とは似ても似つかないほど小柄で非力だった。
(王様ランキングとは、各国の王様をランキングにしたもの。王様の強さ、家来や国民からの信頼、国民の数や国の発展具合などで評価される)さらにボッジは耳が聞こえないため言葉を話すことができず、みんなから「ダメ王子」とバカにされていた。
そんなボッジの剣術指導役には国一番のソードマスター「ドーマス」が任命されており、ボッス王からもしっかり鍛えるよう言われていた。
ドーマスはボッス王を慕って入隊し、努力とセンスで上り詰めて四天王になった剣の天才である。
憧れのボッス王に期待され、「絶対にボッジ強くしてやる」とやる気満々だったがドーマスはその情熱をすぐに失ってしまう。
いくら熱心に指導するも、ボッジは全然強くならないのである。
いつまでたっても子供用の剣(ショートソード)でさえ重くて持つことができない程だ。
しかし、ボッジが生まれつき非力なのには理由があった。
若かりし頃のボッス王が自分が強くなるために魔人と契約し、息子に呪いをかけたのだ。
そんなことは知る由もないボッジには「世界一立派な王様(王様ランキング1位)になる」という大きな夢があった。この物語は、そんな小さく弱いボッジが王様ランキング1位を目指して成長していく胸熱ストーリーである。
【カゲとの出会い】
ボッジは基本的に「あうっ」や「ああう」などの言葉しか発することができないが、ある日ボッジの言葉を理解できる「カゲ」と出会う。(カゲが名前を聞き、ボッジが「おっいぇ」と答えるとなぜかカゲはちゃんと「ボッジ」と分かる。笑)
カゲはその名の通り「影」の一族で、真っ黒で平坦な体に目が二つ付いている(たまに手や口が生える)ユニークなキャラクターだ。
初めはボッジのことをバカにして身に着けている高価な服や装飾品を奪ったりしていたが、だんだんボッジに興味を持ち、ボッジの後をつけてみることにした。
服はカゲが奪ったため、町を歩くボッジはまさに「裸の王様」状態。しかし、本人は満面の笑みで堂々と歩いている。
そんな王子の姿を見た国民はヒソヒソ話をし、子供たちはしゃべれないことをからかう。家についても兵士に陰口を叩かれ、王妃のヒリング(ボッジの母は亡くなっており、ボッス王の二人目の妻)にも全く期待されていない様子。
みんなは、ボッジは言葉が分からないから通じていないと思っているが、密かに読唇術を身に着けているボッジは話も分かるし、みんなの態度から自分がどう思われているのかも理解している。
それでもいつも笑顔で気にしていないように振る舞うのは、ボッジの優しさなのだ。
ボッジは部屋で一人になると我慢していたものが途切れ、悔し涙を流す。そんなボッジを目の当たりにしたカゲは今までボッジをバカにしていた自分を恥じ、「どんな時も味方になる!」と決意。
二人は生涯の友人になり、カゲとの出会いはボッジの人生を大きく変える。
【第二王子ダイダの存在】
「ダイダ」はボッス王とヒリング王妃の間に生まれた第二王子であり、ボッジの異母弟。
文武両道で向上心が高く、剣の技術も大人に勝るほどの腕前である。
王妃や家来、国民からの期待も高かった。ボッジと同様に王様ランキング1位を目指して日々努力を積み重ねている。
そんなダイダは、非力で何もできないボッジを見下しており、兄弟の仲はあまり良いとは言えなかった。
そんな中、ボッス王が病で亡くなったため新国王を決めることとなる。ヒリング王妃はボッス王の「ボッジを王様に」という遺言を無視し、ダイダを王に推薦。
本来であればボッス王の遺言を尊重するところだが、結局ヒリング王妃と四天王と二人の側近の7人で多数決をとることになる。
非力で言葉の話せないダメ王子ボッジと文武両道でみんなから期待されているダイダではどちらが王にふさわしいかは一目瞭然であり、ダイダが新国王に決定する。
ボッス王の遺言を聞いており、王様になれると思っていたボッジは大ショック!!居ても立っても居られず、その場から走り去る。
腕をブンブン振り回し、地面をゴロゴロのたうち回り、大粒の涙を流しながら泣き叫ぶ描写はボッジの悲しみと悔しさが全身で表現されており、胸が苦しくなる。
【カゲがいなくなる】
ある日、カゲがいなくなってしまう。ボッジが呼んでも姿を現さないカゲ。実は「べビン」にとらわれていた。
べビンはダイダの剣術指導者であり、首が三つある「ミツマタ」をペットにする蛇使い。ドーマスと同じ四天王だが、目つきが悪く、いつもニヤニヤしており怪しい雰囲気を持つ男である。
ボッジはべビンから「旅に出たのでもう会えない」とカゲからの嘘の伝言を伝えられる。
初めは信じて落ち込むボッジだったが、カゲが伝言を自分に直接言わずにべビンに伝えて姿を消すのはなぜなのかと疑問に思い、カゲがべビンに捕まったのではないかと推測する。
こうしてはいられないと、カゲを助けに行くところで1巻が終わる。
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感想
絵柄はシンプルでかわいらしいタッチで描かれているが、内容はしっかりしており、キャラクターひとりひとりの過去や心情も細かく描かれている。
主人公が耳が聞こえず話ができないという斬新な設定だが、「あうあう」などの限られた言葉、表情、汗や鼻息、赤面、鼻息などで感情がうまく表現できているのはすごいと思った。
とにかくボッジが良い子!孤独でかわいそうな場面もあるが、前向きで優しく、夢に向かって努力する姿は心から応援したくなるし勇気をもらえる。
作者の十日草輔さんは絵本作家を目指していた時期もあったとのことで、文字が多すぎず、ストーリーも分かりやすい。
スラスラ読み進めることができるので、普段漫画を読まない方や幅広い年代の方にもおすすめだ。
ボッジはこれからカゲと一緒に旅に出ていろんな人と出会い、いろんな経験をして強くなっていく。
非力で言葉も話せないボッジがどのように壁を乗り越えて成長していくのか、とても楽しみでどんどん続きが読みたくなる作品だ。