「エンジェル・ハート」前作「シティーハンター」で描ききれなかった『家族』をテーマとした人間ドラマ!

エンジェル・ハート ~概要~

漫画「エンジェル・ハート」は、北条司によるアクション漫画。2001年より「週刊コミックバンチ」にて連載。全33巻。かつて一世を風靡した週刊少年ジャンプ連載の「シティーハンター」のパラレルワールドを描いた作品。

エンジェル・ハート ~登場人物紹介~

冴羽 (さえば りょう)

本作の主人公。表の顔は新宿にあるアパートの管理人だが、裏の世界では名を知られた凄腕の殺し屋。

恋人だった香にプロポーズしていたが、彼女を交通事故で失う。意気消沈していたところへ、香の心臓を移植されたシャンインが現れ、2人の奇妙な生活が始まる。

香瑩(シャンイン)

本作のもう一人の主人公。台湾から来た殺し屋。

繰り返される暗殺命令に心を蝕まれ、ある日飛び降り自殺を図る。マフィアが強奪した移植用の心臓により一命を取り止めるが、その心臓は獠の恋人であった香の心臓だった。その縁で獠とともに生活をはじめ、獠を父親と慕う。

槇村 香(まきむら かおり)

獠の恋人。獠からのプロポーズを受けた直後、子供を救おうとして交通事故にあって死亡。生前にドナー登録をしていたため香の心臓は摘出されたが、移植のため搬送中のところをマフィアが強奪、シャンインに移植されることとなった。

劇中はシャンインを通して香の意識が表面化することで獠とシャンインを救う。シャンインからは母親と慕われている。

ファルコン

愛称は「海坊主(うみぼうず)」。現在は喫茶「キャッツ・アイ」のマスターだが、かつては凄腕の傭兵。獠とは旧知の仲。

現在は裏の顔としての殺し屋家業からは一線を引いているが、いざとなったときの戦闘力は健在である。

野上 冴子(のがみ さえこ)

新宿西警察署の署長。獠の協力者。喫茶「キャッツ・アイ」をしばしば訪れる。真面目で堅実な性格。年齢をとても気にしている。

エンジェル・ハート ~あらすじ~

台湾から東京・新宿に来た殺し屋のシャンインは、ある人物の暗殺を終えると、飛び降り自殺を図り生死の境をさまよった。マフィアが強奪した移植用の心臓により一命をとりとめるも、その心臓は東京の凄腕の殺し屋・冴羽獠の恋人、香の心臓だった。

奇妙な偶然で出会う2人。獠はシャンインを引き取り、自分の恋人だった香との子供として彼女との生活を始める。香の死後、獠は魂の抜け殻だったが、シャンインと生活するために再び裏の世界の殺し屋、「シティーハンター」としてスィーパーに復帰する。

殺し屋として育てられたシャンインは一般人としての生活に戸惑いつつも、新しい父親である獠と、自分の心臓に生き続ける新しい母親の香とともに、新しい人生を歩んでいく。

獠とシャンインの周りには、東京の闇に潜む巨大な悪と、それに苦しめられる多くの人が集まり、彼らの事件を時に笑い、時に涙しながら解決していく。事件を解決するごとに、シャンインは人間らしい心を取り戻していき、一般社会の若者として成長していく。

そして獠もまた、シャンインを育てることで香を失った心の穴をふさぎ、徐々に父親としてシャンインを導いていく。シャンインの中には香が生き続けており、獠はシャンインとの生活をすることで家族とは何かを知っていく。

エンジェル・ハート ~見どころ~

前作の「シティーハンター」がアクション漫画の名作だったのに対して、本作では「家族」がテーマとなっている。

恋人である香の死によって心にぽっかりと穴が開いた冴羽僚。そして、孤児として暗殺者としての生き方を強要されたシャンイン。初めて家族が出来た僚はそれを失い、逆にシャンインは初めて家族というものをもった。孤独な2人が東京・新宿という大都会で、家族として生活し、それが例え血のつながらない疑似家族のような関係だったとしても、父と娘として生活することで本当の家族になっていく過程が本作の見どころと言える。

前作のような派手なアクションはないが、人間ドラマとしてみれば重厚なテーマを扱っており、前作に比べてより感情移入しやすい作品である。

エンジェル・ハート ~感想~

前作のようなアクションを期待すればがっかりするかもしれないが、人間ドラマとみれば十分及第点をつけられる。私は、前作の野上冴子のファンだったので彼女の変貌ぶりにははじめは驚いたが、それもひとつの在り方かなと思える。少し寂しいおばさんにはなったが、それでも淑女として自分の立ち位置を見つけ、一人の女性として東京で生きていく姿はリスペクト出来る。

また、獠が父親になっていく姿は「レオン」を彷彿とさせ、この映画を好きなひとはきっとお気に入りの作品となるだろう。アニメ化もされたが、前作のような豪華な音楽があるわけではなく、アニメよりも漫画を強く勧める。

繰り返すがアクション漫画ではなく、人間ドラマとしてみれば、前作で欠けていた温かみを補完しうる良作といえよう。