妖怪が見える孤独な少年と妖怪たちの心温まるストーリー!『夏目友人帳』

概要

「夏目友人帳」(なつめゆうじんちょう)は緑川ゆきによる伝奇漫画作品。
白泉社発行のLaLaDXおよびLaLaで2003年から連載している。既刊24巻。2008年にはテレビアニメ化され第六期まで制作されている他、2018年にはアニメ映画化もされた。

登場人物紹介

夏目貴志(なつめ たかし)

物語の主人公。生まれつき妖怪が見える強い力を持ち、そのため周囲から気味悪がられていた。
幼少期に両親と死別し親戚中をたらい回しにされる生活を送っていたが、遠縁の心優しい藤原夫妻に引き取られ、ようやく安定した生活を送れるようになった。

ニャンコ先生/斑(まだら)

ある契約をもとに主人公の用心棒をしている妖怪。本来の姿は立派な毛並みを持つ大きくて白い獣であるが、長い間招き猫の人形に閉じ込められていたため、封印が解かれた今も普段は招き猫のような猫の姿をしている。猫の姿をしている時の呼び名はニャンコ先生。

夏目レイコ

主人公の祖母であり若くして亡くなっている。強い霊力を持ち、妖怪たちに勝負を挑み打ち負かしては自分に従う契約として綴りに妖怪の名前を貰っていた。
ガキ大将的な存在で妖怪たちからは恐れられていたが、中には孤独なレイコに同情する妖怪もいた。

あらすじ

妖怪が見える孤独な少年夏目貴志(なつめ たかし)は幼少期に両親と死に別れて以来、親戚中をたらい回しにされており、心落ち着くことなく生きてきた。
妖怪に反応し他の人が理解できない言動をしてしまうことから周囲には気味悪がられており、そんな環境で生きる貴志は人に対し一歩距離を置く性格となった。
そんな中、父方の遠縁である藤原夫妻に引き取られ、心優しい二人に貴志は少しずつ信頼を寄せていく。
ある日、妖怪に追われ逃げ込んだ神社で、偶然にも斑(まだら)の封印を解いてしまう。斑から祖母レイコの話と友人帳の話を聞き貴志は驚く。
レイコは強い霊力を持つあまり人間たちに嫌われいつも一人で過ごしていたこと、そんなレイコが孤独を和らげるために妖怪たちに勝負を挑み、負けた妖怪たちはレイコの子分になる証として名を友人帳に綴ったこと。
友人帳を手にしたものは名を書いた妖怪たちすべてを統率することができるため、妖怪たちは友人帳を自分のものにしようとレイコにそっくりな貴志を襲うということ。
事情を知った貴志は自分と同じ力、同じ孤独を抱えていた祖母レイコに気持ちを重ね、友人帳から一つずつ妖怪たちに名前を返していくことを決心する。始めは友人帳を奪おうとしていた斑だが、貴志の決意を聞き、もし貴志が命を落とした時は友人帳を譲り受ける契約をしてひとまず用心棒になる。
謎の多い祖母の足跡を辿り、たくさんの妖怪と出会いながら、貴志は少しずつ守りたいものを増やしていく。

見どころ

妖怪と聞くと人間にとって良くない存在と思われがちですが、この作品には単純な悪役は存在せず、それぞれの妖怪に背景があり物語が描かれている所が見どころです。
妖怪たちは人間と生きている時間軸が違うため、良くしてくれた人間への感謝や、淡い思いや、放っておかれた寂しさなどを健気に抱え続けています。主人公はそんな妖怪たちの気持ちに感情移入し、ひとつひとつ友人帳から名を返していく作業を丁寧に繰り返していくのです。
祖母レイコの力に屈して名を連ねることになった妖怪もいれば、いつも独りぼっちのレイコに半ば同情し名を連ねた妖怪もいるように、妖怪たちは決して話の通じない悪役ではなく、貴志のように真摯に向き合おうとする者には自分をさらけ出してくれます。
謎に包まれた祖母の生涯を追いかけつつ、友人帳からの解放を粛々と続けていく貴志とそばでフォローするニャンコ先生の種族を越えた絆も見どころです。

感想

泣けます。とにかく泣けます。優しく繊細なタッチで描かれる絵と心にじんわり来るお話が合わさって、唯一無二の存在感を持っている作品です。妖怪たちの健気でまっすぐな人情溢れるエピソードにはどうしても涙腺が緩んでしまいます。
始めの頃は一話完結でストーリーが進むため一話事に必ず涙を流していました。主人公は祖母レイコと同じように強い霊力を持っていますし、同じように人から疎まれて生きてきたのですが、レイコと違う点は孤独ではないことです。引き取ってくれた藤原夫妻や、学校の友人、それにニャンコ先生という心強い相棒がそばにいてくれるので、その点が主人公の持つ心の温かさをより強いものにしてくれ、所謂「闇落ち」のような心配がないように思います。とても心が温まる作品です。