「彼氏彼女の事情」虐待、完璧主義、恋愛…心の葛藤を丁寧に描いた、少女漫画界の異端児!

彼氏彼女の事情 ~概要~

「彼氏彼女の事情」は津田雅美による日本の少女漫画作品。通称「カレカノ」。白泉社発行のLaLaにて1996年から2005年まで連載された。全103話。単行本は全21巻。1998年に庵野秀明監督によってテレビアニメ化もされている。

彼氏彼女の事情 ~登場人物紹介~

宮沢 雪野(みやざわ ゆきの)

あだ名はゆきのん。子どものころから人に褒められることに命を懸けてきた超努力家で計算高い女の子。家ではずぼらで適当な格好をしているが、外では容姿も言動も完璧な自分を演じ、そのギャップには家族も引いてしまうほど。

有馬 総一郎(ありま そういちろう)

もう一人の主人公。あだ名はありま。運動神経抜群、美形の秀才で人当たりも良い。皆が憧れる文武両道の完璧超人だが、実は雪野と同じく優等生の仮面を被っている。自由奔放な雪野に恋をする。

浅葉 秀明(あさば ひであき)

主人公たちの同級生。あだ名は多数あるが基本的にあさばと呼ばれている。有馬とは別の方向でモテる学校のアイドル的存在。女の子のことが大好きで彼の目に映る女の子は普通の人より5倍美しく見えている。

彼氏彼女の事情 ~あらすじ~

県内一の進学校である県立北栄高校1年A組のクラス委員長、宮沢雪野は子どものころから完璧な優等生。成績は優秀、スポーツも万能、容姿も美しい雪野の本性は実は見栄の塊周囲から特別扱いをされ注目の的でありたいがために底知れぬ努力をして優等生を演じていました。

しかし高校生になり、生まれて初めて自分以上の注目を集める完璧超人に出会います。彼の名前は有馬総一郎。医師の息子で見た目も麗しく、運動神経も良ければ性格も良い彼が、雪野の念願だった新入生総代を務めてしまったことから、雪野は心の奥底で激しいライバル意識を燃やします。

一度は有馬に奪われた学年一位を猛勉強で奪還し、自分のうわべに騙され告白してきた有馬をあっさり振ってみせます。リベンジが成功したかと思いきや、ある日油断した雪野は自分のずぼらな本性を有馬に知られてしまいます。

雪野の裏の顔を知った有馬は雪野の弱みにつけこみ、自分の抱える仕事をやらせ下僕のようにこき使い始めます。性格の良い優等生だったはずの有馬はどこへ?!

堪忍袋の緒が切れた雪野が有馬にブチ切れた所から仮面優等生二人のヘンテコな友情が始まり、やがては恋愛感情を含めた強い絆で結ばれ成長していきます。

彼氏彼女の事情 ~見どころ~

完璧優等生の仮面をかぶってきた雪野はあらゆることで周囲から称賛されています。そんな彼女の動機は皆にすごいと言われると気持ちいいから。誰でも少なからず持っている欲求ですが、彼女の場合は努力の量が桁違い。もちろんついてくる結果も桁違いです。

しかし物語が進むと雪野は被ってきた完璧の仮面をあっさり脱ぎ捨ててしまいます。本来の自分をさらけ出すことで次々と親友ができるところが見どころ。

雪野に比べてもう一人の主人公、有馬が優等生の仮面を被っていた理由は深刻で、簡単に脱ぎ捨てることができるものではありません。そんな彼が雪野に恋をし、自由奔放な彼女との関わりの中で少しずつ本来の自分を表現していきます。

主人公二人を囲む個性の強いキャラクターたちとの青春と深い葛藤を経た成長が描かれるところが見どころ。

彼氏彼女の事情 ~感想~

いや~おもしろい。外では完璧優等生、家ではものぐさな主人公の性格がまっすぐでさっぱりしていて読んでいて痛快です。言うべきことは言い、間違いは間違いと認める強さを持っている所も好感が持てます。仮面を被った自分が認められるのも気持ち良いが、本来の自分が認められるのも良いもんだと納得していく過程も素敵。

一方、有馬くんは抱えている闇が深く、雪野のように前に進むことが出来ないのが読んでいて苦しかった。簡単にはいかない出自が彼を苦しめているんですよね。一度はあきらめようとした雪野との縁を諦めきれないのが有馬くんらしくそこがとても良かった。我を通せてよかったね。

恋愛だけではなく、友情、嫉妬、家族の問題など様々なテーマが描かれていて、特に幼少期に精神的ダメージを受けた子が自分を見つけ大きく成長していく姿には感動しました。