超ダークな問題作「ヒミズ」。作中に現れる不気味な謎の「怪物」に迫る!

こんにちは、ニケです!今日は「問題作」とも言うべき傑作、「ヒミズ」をご紹介します!

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「ヒミズ」作者:古谷 実 【全4巻】

あらすじ

主人公の住田は、恵まれない環境で育ちながらも、誰にも迷惑をかけること無く普通に生きたいと願う中学生です。でも、彼の願いとは裏腹に、どんどんと普通ではない人生を辿ることとなります。
母親に捨てられ、父親を殺してしまった住田は、自分の人生を残り1年と決めます。そして、1年というタイムリミットまでの間に、世間に蔓延る悪人を殺す事を決意します。しかし思うように悪人を見つけることは出来ません。
そんな中、住田に心を寄せる女子・茶沢により、自身が殺人を犯したことを警察に通報されてしまいます。
住田は警察に「あと1日待ってほしい。明日必ず出頭します」とお願いし、警察もそれを承諾します。そして、最後の夜を茶沢と過ごすのでした。
茶沢は住田に「きちんと罪を償って、その後二人で幸せな家庭を築こう」と逆プロポーズします。
しかし、住田はそれとは違う道を選択するのでした。

ギャグ要素の無い、ダークでシリアスな作品。

作者はギャグ漫画「行け!稲中卓球部」で有名な古谷実先生です。しかし今回のこの「ヒミズ」、ギャグ要素は一切無く、ひたすらダークでシリアスな作品です。
暴力や殺人、性的なシーンも数多く含まれ、読んだ後は、少し暗い気持ちになってしまうかもしれません。(笑)
しかし、息を飲むストーリー展開で続きが気になり、4巻一気に読めてしまいます。
また、素晴らしい画力にも引き込まれます。
ストーリーは、主人公の中学生・住田が母親に捨てられ、学校にも行かずに働きなんとか食費を稼いだり、駄目な父親を殺してしまったりと、いたいけな少年が必死に生きる様が描かれています。
また、物語の合間には、謎の不気味な「怪物」が現れます。「怪物」は、主人公が作り出した幻覚のようにも見えます。しかし、物語の重要な役割を果たしています。
今回はこの「怪物」に迫ってみようと思います。

時折姿を現す「怪物」とは?

住田は、ある悩みを抱えていました。それは、時折姿を見せる「怪物」の存在です。
「怪物」の正体は何なのか。なぜ住田の前に姿を現すのか。
話が進むにつれ、徐々に明らかになっていきます。

住田を陰から見つめる「怪物」

ストーリーに最初に現れた「怪物」は、住田の様子を陰から伺っていました。住田はどうやら何度かその姿を目にしたことがあるようですが、非現実的なその存在に、目の錯覚だと思い込もうとします。

徐々に近づく「怪物」

「怪物」は次第に現れる回数を増やしていきます。初めは遠くから見ているだけだったのに、徐々にその距離が距離が近くなっていきます。そして住田が「怪物」に話しかけたり、「怪物」が住田に話しかける場面も出てきます。

単行本『ヒミズ』より引用

「怪物」の正体を握る鍵

「怪物」の正体とは、いったい何なのでしょうか。
生々しいほどに現実的なこのストーリーで、幽霊だったとか、妖怪だったとか、そんな風にはとても思えません。住田自身が作り出した幻覚なのでしょうか。
そんな「怪物」の正体の鍵を握る、あるシーンがあります。それは唯一、住田以外の人間に「怪物」が見えるシーンです。
住田の友達である夜野が、とある事情で男に殺されかけます。殺されるまいと反撃する夜野は、男にダメージをくらわせます。その際、男には夜野の姿が「怪物」に見えるのです。
つまり「怪物」は、”死”に対する恐怖を具現化したものということなのでしょうか?

ラストシーンで明らかになる、「怪物」の正体

「怪物」の正体は、ラストシーンで明らかになります。といっても、はっきりと何だったという訳では無く、読者に判断を託すような描かれ方でもあります。

普通で無いが故に普通を望む主人公。その運命は変えられるのか。

住田は不幸な境遇で育ち、「普通」に生きる周りの人々を妬みながら必死に生きます。頑張れば自分も「普通」になれるのではないかと努力します。
しかし、どんどんと状況は悪化していきます。それに伴うように、静かに近づいてくる「怪物」は、運命の象徴のようにも見えます。
住田は「怪物」を恐れ、刃向かいながらも、次第に受け入れていきます。
それは、住田が運命を変えることを諦めたのか、変えられないことを悟ったのか。
あなただったらどう考えるでしょうか?
一人の少年の生き様を描いた、ダークな問題作「ヒミズ」。是非一度読んでいただきたい作品です。