恐怖体験、[飛び降り自殺]
Aは、写真を撮るのが好きなカメラ小僧だった。
その日は、都会の景色を撮ろうと、街が見渡せる丘へやってきた。
丁度日が沈む頃だったので、空のオレンジ色と街の明かりが良い雰囲気を醸し出していた。
これは良い写真が撮れそうだと、レンズ越しに色々な角度で風景を眺めていた。
ふと、一つの高層ビルの屋上に人影が見えた。カメラの焦点を合わせると、男性が屋上のフェンスを乗り越え、飛び降りようとしていた。
飛び降り自殺か-!Aは驚いた。やめさせなければと思ったが、こんなに遠く離れた場所にいては、声をかけてやめさせることも出来ない。カメラ越しに見る事しか出来なかった。
次の瞬間、男は飛び降りた。
その時Aは、思わずシャッターを押した。
後から思えば不謹慎極まりないが、この2度と撮ることができないような場面をカメラに収めたいという気持ちに抗えなかった。
その後しばらくして、ビルの下が人や救急車、パトカーで賑わっていた。高層ビルから飛び降りたのだから、即死であることは間違いなかった。
そして翌日、写真を現像したAは愕然とした。
Aは写真を連写で撮っていたのだが、そこに写った男は、飛び降りている最中、こちらを見ていた…。
-END-