漂流先は狂気の異世界だった…『漂流ネットカフェ』の見どころ紹介

概要

漂流ネットカフェは、押見修造さんによるパニック漫画です。
2008年から2011年まで漫画アクションで連載されていました。単行本は全7巻です。
実写映画化もされていて、同じ作者の『悪の華』と同じくらい、知名度のある作品となっています。

登場人物紹介

土岐耕一

化粧品会社で経理として働く29歳。
子供を身ごもった妻と暮らしており、世間では幸せだと思われていますが、その実、会社では結婚してつまらなくなったと言われ、家では妻にヒステリーを起こされ、辛い日々を過ごしていました。
そんな中、通りすがったネットカフェに立ち寄ったことで、不思議な出来事にあいます。

遠野果穂

土岐耕一の初恋の人。中学生の時の同級生で、ネットカフェで偶然再会します。
今回の作品の鍵を握る人物であり、読みすすめるに連れて、様々な謎が明かされていきます。
土岐耕一は、家に残した妻と、遠野果穂の間で揺れ動くことになります。

寺沢

土岐耕一や遠野果穂らと同じ時間帯にネットカフェに訪れていた、いわゆるネットカフェ難民。
問題発生後、初めは大人しくしていましたが、後々暴力でみんなを支配しようとします。土岐耕一達の明確な敵として描かれており、彼によって振り回されていきます。

あらすじ

物語は、会社と家の中で板挟みになり、自暴自棄気味になっていた土岐耕一が、ネットカフェに立ち寄ったことから始まります。
土岐耕一は、ネットカフェで偶然、中学時代の同級生で初恋の人である遠野果穂に出会い、昔を思い出してドキドキしてしまいました。
そんな中、ネットカフェがいきなり停電し、さらには街全体も停電してしまいます。外は豪雨で、出ることもできないため、残された人間は、皆ネットカフェに泊まることにしました。
一夜明けて、外に出た2人。すると目の前には、ネットカフェがあった東京とは思えないような湿地帯が広がっていました。何が起こったか分からない一同。しかしこの状況を何とかするために調査を始めることにしました。
その道中で、数人がパニックを起こしたり、性的な暴力を起こしたりと不穏な空気が流れます。土岐は遠野を守るために動きますが、そんな中で、寺沢が暴力を働き、混乱を鎮静。しかしそれをきっかけに、力で支配しようとします。食料や飲み物も自分が管理すると皆を脅して、全部を取り上げてしまいました。こうして、寺沢が支配する中で、土岐は遠野を守るために動くといった構図で、物語は進んでいきます。
果たして、この状況は何によるものなのか、謎は徐々に明かされていきます。

見どころ

この作品のみどころは、人間の醜さです。
押見修造さんの他の作品にも共通することなのですが、この作者さんは、登場人物を極限の状況に追い込むことにより、人間の醜さをさらけ出していく作風を多く用います。
この作品も例外ではなく、暴力、また性的な暴力などが横行します。そのため、そういった描写が苦手な方は、この作品を読むのは辛いと思われますが、逆に好きな方にはとことん合うと思います。
「悪の華」や、「僕は麻里の中」では、学校が舞台でしたが、この作品では、社会人が主人公と言うことで、少し年齢層が上がっています。
そのため、他の作品では描くことが出来なかったようなところも描かれています。他の作品ともまた違う魅力もあるため、押見修造さんの作品が好きな方は、ぜひ読んでいただきたい作品と言えます。

感想

押見修造さんの作品の魅力は、みどころの項目でも書いたような、人間の醜さなどの描写です。
極限の状態に追い込まれた人間達が、欲望に忠実になった結果生まれた、カオスな雰囲気は、読むのがしんどくなるほどです。
ただ、その一方で、押見修造さんの作品の魅力は、恋愛模様を描くことでもあります。人間の醜さを描く中で、恋愛に関しては意外と青臭いというか、純粋なものを描きます。
このギャップもまた、押見修造さんにしか描けない世界だと思います。
さらにこの作品には、一体なぜ、土岐達はネットカフェの周りが何もない世界に閉じ込められたのかという謎もあります。
その謎が明かされていくところもみどころの1つで、最後まで飽きさせない展開が続きます。単行本も全7巻と短いため、一気読みすることも比較的簡単です。ぜひ、読んでいただきたい作品です。