宇宙での遭難、未知の惑星探索を描く「彼方のアストラ」

概要

「彼方のアストラ(ASTRA LOST IN SPACE)」は篠原健太によるSF冒険漫画。全5巻。集英社のウェブコミック配信サイト『少年ジャンプ+』にて、2016年5月9日から2017年12月30日まで連載され、2019年にはアニメ化もされた。

登場人物

カナタ・ホシジマ

17歳。身長181cm、体重71kg、誕生日5月5日。黒髪。本作の主人公で将来の夢は宇宙探検家になること。非常に勇気があり、リーダーシップもあるがどこか抜けたところもある。鼻の上の傷がトレードマーク。困っている人を決して見捨てない性格は過去のある事件がきっかけとなっている。

アリエス・スプリング

17歳。身長162cm、体重52kg、誕生日4月20日。髪色はピンク。片方ずつ目の色が違うオッドアイ。本作のヒロインであり、もう一人の主人公。物語を語るストーリーテラーの役割も担っている。明るく朗らかな性格でやや天然。大きな口を開けてよく笑いよく食べる。好奇心旺盛でどんな時も諦めない芯の強さを持つキャラクター。見たものを写真のように記憶できる映像記憶能力の持ち主。

ザック・ウォーカー

17歳。身長185cm、体重76kg、誕生日は6月9日。髪色はシルバー。 IQ200を誇る青い瞳の天才。眼鏡をかけている。宇宙船の操縦免許を持ち、メカニックが得意であらゆるものを発明することができる。将来の夢は科学者になること。常に冷静沈着で、船員の命を最優先に考えている。

キトリー・ラファエリ

17歳、身長:157cm、体重43kg、誕生日は6月1日。髪色は金。ザック・ウォーカーとは家が隣同士の幼なじみで仲が良い。母親は医師で本人も将来は跡を継ぐため医学を専攻している。チームの医療担当。気が強く素っ気ない振る舞いをするが、心を許した相手には違う顔を見せる。

フニシア・ラファエリ

10歳、身長136cm、体重31kg、誕生日は10月19日。髪色は金。ラファエリ家の養子になったフニシアはキトリーの義妹。顔の造りや髪の色まで容姿がキトリーに瓜二つ。一人称は「フニ」で仲間からもフニと呼ばれている。義姉のキトリーのことが大好き。

あらすじ

アリエス・スプリングが大きな荷物を抱え、わくわくしながら向かったのは宇宙港。今日から惑星マクパで『大自然の中、生徒だけで5日間生活する』というケアード高校の惑星探索課題が始まるのだ。朝からピンチをカナタ・ホシジマに救われたアリエスは、背の高いザック・ウォーカー、不機嫌そうなキトリー・ラファエリ、ひょうひょうとしたルカ・エスポジト、王子様のような見た目のシャルス・ラクロワ、おどおどしたユンファ・ルー、クールなウルガー・ツヴァイク、10歳のフニシア・ラファエリがこの旅の仲間だと知らされる。合計9名の班員は前途洋々宇宙へ出発するが突如ハプニングに見舞われ、宇宙へ放り出されてしまう。無人の宇宙船を発見し、命からがら乗り込んだ9人は故郷へ帰還できるか絶望的な状況に。しかしどんなピンチも諦めない主人公カナタと、宇宙船の運転免許を持つザックのおかげでなんとか帰還計画を立てた9人は、拾った宇宙船をアストラ号と名付け、故郷へ帰るために舵をとる。生きていくためには水と食料を確保する必要があり未開の星へ降り立ち探検をすることに。信じられない気候の未知の星々で見たことのない植物や動物を発見し、どうにか食べられるものを見つける班員たち。帰還へ向けて希望を持ち始める船員たちだったが、宇宙船の通信機を故意に壊した者がいることがわかる。助け合ってきた仲間たちの中に裏切り者がいる…?わざと遭難しようとしている犯人は誰なのか、その目的はなんなのか。フニシアの発言をきっかけに、班員9人全員にある共通点があるのが判明する。ついにこれがただの遭難ではない。何者かによって計画された陰謀だったことが明らかになる。9人は無事に家族が待つ星へ帰れるのか?

見どころ

全5巻と簡潔ににまとまっているのに非常に読み応えのある作品。王道冒険ストーリーの中にギャグ要素、ラブコメ要素がうまく調和しており、キャラクターが皆イキイキとしている。始めは分かり合えなかった班員たちの間に強い絆が生まれ、一生ものの友人になっていく展開は感動的。最終話では9人の数年後の様子が描かれ、キラキラした心を持ったまま大人になった姿が見られるところも見どころの1つ。宇宙での遭難、未知の惑星探索を知識と勇気とユーモアで乗り越える姿は爽快で子どもから大人まで楽しめる。ギャグを散りばめながらテンポよく進むが、あるキャラクターの壮絶な過去が明らかになると一気に物語の雰囲気が変わる。それでも過酷な旅を乗り越えて来た班員たちは助け合い皆で人間的成長を遂げる。完璧なハッピーエンド。

感想

正直期待していなかったが面白い作品で感動した。連載終了後からじわじわと評判を呼び、次に来る漫画大賞にランクインしアニメ化へ至ったのも納得。まずキャラクターが皆素晴らしい。物語のテンポも良い。会話も細かいところまでセンスが光る。どのキャラクターも弱さを抱えながら一生懸命生きていて好感が持てる。どんなピンチでも必ず前向きに立ち向かう主人公のパワーに嘘くささがなく、今ではあまり見かけないくらいヒーロー像ど真ん中の正真正銘のヒーローだが、全く嫌味がない。それぞれのキャラクターがどうしてこんな言動をとるのかきちんと背景が描かれており、自然と全員の幸せを祈れる素敵な作品。この旅の仲間たちは、それぞれが得意な部分を活かし、苦手な部分は補い合うとても良いチーム、家族になっている。人にオススメしたい作品。