新天地を目指すヴァイキング達の物語「ヴィンランド・サガ」あらすじ・見どころ・感想など

作品概要

漫画「ヴィンランド・サガ」は幸村誠による新天地を目指すヴァイキングたちの物語。 2005年4月から同年10月まで「週刊少年マガジン」で連載された後、12月より「月刊アフタヌーン」に移籍し連載中。 コミックス全(既刊)23巻。 2019年7月7日よりNHK総合にてアニメが放送中。


登場人物紹介

トルフィン・トルザルソン

アイスランド出身 「狭気のトルフィン」の異名を持つ。 ヴァイキング集団の首領であるアシェラッドに父親を殺され、その復讐のために仇であるアシェラッドのもとで少年期を過ごす。 アシェラッドに戦いを挑み続けたことで戦闘能力は飛躍的に向上し、2本の短剣を武器に数多の戦場に参加。 アシェラッドが殺された後、クヌートによって奴隷身分に落とされ、ケティル農場に引き取られる。 殺し合いの日常から離れ、農場での生活がトルフィンを変えていく。 暴力との決別を誓い、戦争も奴隷もない平和な国を作るため新天地ヴィンランドを目指し旅立つ。


アシェラッド・ウォラフソン

デンマーク出身 「灰まみれ」の異名を持つ。 傭兵的ヴァイキング集団の首領。 トルフィンに命を狙われ続けるも、トルフィンにっとては越えるべき存在として、ある意味、父親的な存在でもある。 性格は沈着冷静で非情、戦闘能力もトルフィンをはるかに凌駕するほど。 父方のデンマークよりも母方の故郷であるウェールズに強い帰属意識を持ち、真に守る誓いの口上では母方の祖先にまつわる名を名乗る。 覚醒後のクヌートに忠誠を誓い、最後までそれを守り通す。


クヌート デンマーク王

スヴェンの次男。スヴェン王に伴いイングランド侵攻に赴くもトルケル軍によって拘束、捕虜になってしまう。 その後アシェラッドたちによって救出される。 生の戦場を実体験し、側近たちの死などをきっかけに覚醒。 神に代わって自分が地上に理想郷を作ることを決意し、父であるスヴェン王打倒を誓う。 その後アシェラッドやトルケルを従え王位を継承し、やがてイングランド王位にもつく。


トルケル

デンマーク出身。ヨーム戦士団首領であり、トルフィンにとっては大叔父にあたる。 とにかく戦が大好きであり、戦を求めデンマーク側からイングランド側に寝返ったほど。 クヌートを拘束するもアシェラッドにより奪還されてしまう。 一連のクヌートとアシェラッドを巡る争いの中でトルフィンと決闘し、左目を失明。 覚醒したクヌートの瞳にトルフィンの父トールズと同じ輝きを見て、クヌートについていくことを決める。


レイフ

グリーンランド出身 大西洋を旅しながら交易を続ける義理堅くやさしい旅人兼商人。 トルフィンがまだ幼い頃に、ヴィンランドの話を聞かせる。 トルフィンの父親トールズに恩があり、トルフィンをずっと探し続けていた。 ケティル農場でトルフィンと再会後、一緒にヴィンランドを目指す航海へ旅立つ。


あらすじ

10世紀の終わりから11世紀の初め、ヨーロッパ中の海や河にはヴァイキングと呼ばれる集団が表れ、街や村を襲撃していました。

そんな時代、アイスランドにある小さな島にヨーム戦士団のフローキが現れます。 島に住むトールズにイングランド戦への協力を求めに来たのです。 トールズは元ヨーム戦士団の大隊長でしたが、殺し合いの連鎖から逃げるように家族と共に小さな島へ移住していたのです。

島民を人質に取られ、トールズは致し方なく要請に応じます。 島の若者数人と、友人のレイフらと共に島を出航。 その船にはトールズの息子トルフィンが父に黙って乗り込んでいました。

本土との中継地点であるフェロー諸島に立ち寄り、そこでトルフィンやレイフを降ろすことになりますが、事件が起きます。 フェロー諸島で待ち伏せしていたアシェラッド率いるヴァイキング集団がトールズたちを襲撃したのです。

トールズは孤軍奮闘、決闘の末アシェラッドを倒しますがトルフィンを人質に取られてしまいます。トールズは自分の勝利の証としてトルフィンやレイフたちの無事をアシェラッドに誓わせ命を差し出すのでした。 レイフたちは誓い通り解放されますが、トルフィンは父の仇を討つため、アシェラッドのヴァイキング集団と行動をともにすることになります。成果次第でアシェラッドとの決闘が出来ることを条件に仕事を手伝っていくトルフィン。 しかしその仕事は村や集落の襲撃といったもの。 そんな殺し合いの毎日がトルフィンを変えていきます。

いつしか人を殺めることへの躊躇も罪悪感も感じないようになっていました。 アシェラッドたち傭兵集団はやがてデンマーク軍の一員としてイングランド侵攻に加担していくようになります。 アシェラッドの胸に秘めた野心は否応なくトルフィンを戦火の只中へと巻き込んでいくのでした。


見どころ

ヴィンランド・サガの前半部であるトルフィンの少年期は戦闘場面が多く、この時代西ヨーロッパが殺し合いの時代だった事を痛切に感じさせてくれます。

まだ小柄なトルフィンが、スピードを最大の武器に父親の形見である短剣を駆使して屈強な大人達と殺し合いを演じる場面は緊張感に満ちており、必見といえるでしょう。

また、アシェラッドやトルケルが本気を出した時の殺気に満ちた顔や姿はほんとに怖くて間違いなく印象に残ってしまうと思います。 少年期クライマックスのトルケルとの戦闘、本気を垣間見せたアシェラッドとの戦闘は見応え十分です。

トルフィンが自らのしてきた事に悩み苦しみ、葛藤する青年期にも戦闘場面はありますけれど、見ていて心が躍るような戦闘は少年期にあります。


感想

ヴィンランド・サガを読むきっかけは、実在した人物、ソルフィン・ソルザルソンをモデルにした話だと知ったからでした。もちろん作中の出来事はあくまでフィクションなのですけれど、作品内容から時代背景を知ったり感じたりすることで、実在したソルフィンがなぜ新天地を目指したのかなどを想像して楽しむことが出来ます。そういった意味では歴史漫画でもあり、冒険記漫画ですね。

レイフなどは実在したレイフで、ヨーロッパ人として初めて北米大陸に上陸した人物で有名です。 作者とは別に監修が付いていることからも時代考証がしっかりとされていることが窺え、それがこの作品が醸し出す説得力に繋がっているのかもしれません。 フィクションとリアルを上手く融合させている作品だと思いました。