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永遠の旅を続ける「ポーの一族」

概要

漫画「ポーの一族」は「萩尾望都」によ少女漫画。当時としては珍しい軽いボーイズラブ要素ブロマンスを含む漫画である。「1972」年より「別冊少女コミック」にて連載。全5巻。その他、小学館文庫やフラワーコミックススペシャルにて再販、宝塚にて公演されるなど、現在でも一部のファンから絶大な支持を受けている。

登場人物紹介

エドガー・ポーツネル

1740年誕生ー2016年まで消息が判明している 作中の主人公 14歳の時にバンパネラの一族の大老よりポーの一族に加わる。以後1879年に妹が没するまで妹のためにバンパネラとして生きる。その後はアランを妹の代わりとして、放浪を続けている。目的のためには手段を選ばない非情さと、幼くして甘える相手を持たなかったためか少年のような心も持ち合わせている。

メリーベル・ポーツネル

1744年誕生ー1879年没 作中のヒロイン・主人公の妹 13歳の時に兄エドガー・ポーツネルによりポーの一族に加えられる。以後1879年まで理想的な少女として生き続ける。バンパネラの血が合わず病弱で、エドガーのサポートなしには生きていけなかった。母親の恋人であるクリフォード医師に銀の弾丸を打ち込まれて消滅する。

アラン・トワイライト

1865年誕生ー1976年没 作中の真ヒロイン的な立ち位置 貿易紹介の子息。14歳の時にメリーベルに恋をする。メリーベルの死を機に、メリーベルを愛していたエドガーとともに生きることを選ぶ。世間知らずで、少女のような気性がある。

ユーシス・エヴァンズ

推定13歳以上 実親譲りの美しい金髪を持つ美少年。メリーベルと恋をするが、ユーシスを愛する母との板挟みに心を痛み、自殺をする。皮肉なことに、ユーシスの死を持ってメリーベルとユーシスの母は和解する。

リデラード・ソドサ

通称リデラ 年齢:2歳ー10歳、63歳 バンパネラであるエドガーとアランに育てられた少女。10歳まで2人に育てられるが、以降は祖母に引き取られ普通の人間として生きる。2人の生き証人のような立場で老後の話が再度登場する。

あらすじ

少年少女たちがバンパネラとして悠久の時を生きる姿、その葛藤と喜び、苦悩を描いた漫画。物語はエドガー・ポーツネルとメリーベル・ポーツネルの別れ、そしてエドガー・ポーツネルとアラン・トワイライトの出会いから始まる。他人であるエドガーとアランを繋ぐものは、消滅したメリーベルへの想い。愛と恋と喪失。その穴を埋めるように寄り添って生きる二人はある意味では歪とも言える。しかしながらそれが魅力でもある。エドガーとメリーベルの過去を遡る話と、アランとエドガーがともに過ごした時間を描かれた話の大きく分けて二種類の話がある。また、視点としては、主要メンバー視点のもの以外に、第三者から見た伝承的視点の話もある。バンパネラは100年以上生きる長命な生き物なため、ミステリアスな歴史を紐解いていくような描かれ方に終始徹している。最後に描かれるのは、悠久の時を目的を持たずに生きてきた彼らが何かに久しく興味を持ち、それのために行動することで命を失う。メリーベルを失った喪失はお互いでは決して埋まることはなかったように見えるが、終わりの時に彼らは初めて満たされたと解釈できる。作中にはギムナジウムの話など、以後の漫画にも参考とされるような話が多く盛り込まれている。

見どころ

オムニバス方式で語られる漫画。連載漫画というよりは、ポーの一族の末裔の生涯をあらゆる視点から切り取るように書かれている。主人公はタイトルごとに変わるが、シリーズを通しての主人公はエドガー・ポーツネルとされている。オムニバス方式の良いところをきちんと活用しており、あらゆる人物に感情移入がしやすく、語られていない部分が多いことでミステリアスさが残るため多くのファン心を擽る。語られていない部分が多いと書いたが、きちんと世界観は作り込まれており、整合性があるため、安心して読める作品でもある。

感想

耽美漫画として有名だったので、読みました。セリフの間合いの取り方、人間関係の描き方、全てが一つの美学を軸に書かれている作品だと思います。老いることもなく、朽ちることもなく、ただ目的もなく彷徨い続けることは死んでいるのと同じなのかと思わされる。しかしながら、物語としてその様を見ているのは美しいです。何度も読み返してしまいました。バンパネラという人知を離れた設定が、人類の憧れの成れの果てを描いているようで物悲しい美学の漫画。一つのジャンルを確立した漫画だと思います。